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南相馬市看護管理者会議(MNDC)会長医療法人社団青空会 大町病院 看護部長
藤原 珠世さん
ふじわら   たまよ
「看看連携」の実現で
南相馬の地域医療に力を

 南相馬市内5病院(南相馬市立総合病院、小野田病院、鹿島厚生病院、雲雀ヶ丘病院、大町病院)の看護部長らで組織する「MNDC」は、南相馬市ナーシングディレクターカンファレンスの略称。昨年8月から毎月定例会を開催し、看護職員の育成・確保・定着とスキルアップを図るための調査・研究を行っている。

「こうしてほしい」と具体的な提案を行政へ

 これまでも南相馬市主催による看護部長の集まりはあったのですが、現状報告や漠然とした希望を伝えるだけで終わってしまいがちでした。行政に「看護師が足りない」「なにか対策を」と話すだけでは、状況は変わっていかないのです。具体的に「こうして欲しい」「こんな取り組みをしたい」と提言したり、行動をしていこうと始まったのが「MNDC」です。会の目的を「看護職の人材不足解消とスキルアップ」に絞り、参加者みんなで話し合い、知恵を出し合ってきました。

 MNDCの取り組みで4月から始まるのが、南相馬市立総合病院からの「職員研修」です。人工透析治療の実績がある小野田病院と大町病院に、市立病院から中堅クラスの看護師がきます。実のところ、「在籍出向」で市立病院から来てもらって民間病院の看護職不足解消につなげていく目論みだったのですが、法律などの縛りがあって、現状では民間病院への在籍出向は難しいことが分かりました。今後も何か手立てがないのか働きかけていきますが、即効性のある人材不足解消にはなりません。しかし研修に来た看護師に指導することで、受入病院の看護師たちの意識も高まるので、「看護の質の向上」という面での効果が大いに期待されています。

各病院の得意分野を生かした連携の仕組み

 私が看護部長を務める大町病院では、ここ数年大腸がんの手術数が増えています。現場の看護師から「人工肛門のケアを学びたい」という声が上がっていることをMNDCで話したところ、市立病院の五十嵐看護部長に「皮膚・排泄ケア認定看護師」を紹介してもらうことができ、昨年12月に大町病院で講習会を実施しました。市立病院からは、市内唯一の精神科病院・雲雀ヶ丘病院の看護師に「認知症のケアを学びたい」という要望が出ています。例えば、認知症の患者さんが肝障害で入院した時に、精神科の投薬が途切れてると症状によっては治療ができなくなります。雲雀ヶ丘病院の入院患者受け入れ人数に限りがある以上、よりよい医療の提供のために市内全体の「看看連携」が必要なのです。

 南相馬市立総合病院を中心に市内の各病院が得意分野を生かして連携すれば、国の方針である「地域包括ケアシステム」の実現にも近づいていけると思うのです。そのためにMNDCが今できることはたくさんあります。これから南相馬市全体の医療をどうしていくのか。将来を見通せる地域医療のあり方を提示できれば、「この病院で働きたい」「この地域で働き続けたい」と思う看護職を増やすことにもつながっていくはずです。

お話を伺って

 「問題は、すぐさま解決していかなければならないもの。課題は、将来的に実現するために取り組んでいくべきもの」と藤原さん。「誰かが転んでいたら助け起こすのが問題、転ばないように環境なども考えるのが課題」と話す言葉は、実に明快で引き込まれます。昨年秋に行われた「南相馬市看護師等合同就職面接会」では、MNDCのメンバーと一緒に駅前でチラシを配ったり、1月には大町病院で「看護補助者養成講習」を実施したりと、「すぐできること」には日々取り組んでいるそうです。「新しい地域医療を作る」のは大きな課題。しかし、藤原会長のこの実行力とスピード感をもってすれば、南相馬モデルの地域医療が全国に発信される日はそう遠くなさそうな気がしました。(ライター 齋藤真弓)

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