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INTERVIEW

看護師インタビュー

命のはじまりに寄り添い、赤ちゃんと未来を支える看護をNICUから新生児医療を見つめる視点

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福島県立医科大学附属病院 新生児集中ケア認定看護師

根本 征弥さん

Masaya Nemoto

Profile

福島県田村市出身。平成20年、千葉県の病院で勤務を開始。その後、独立行政法人国立病院機構福島病院で新生児医療に従事。平成29年から福島県立医科大学附属病院で総合周産期母子医療センターNICU(新生児集中治療室)に勤務し、令和6年には日本看護協会の新生児集中ケア認定看護師の資格を取得。現在は現場での看護に携わるとともに、新人看護師の指導や学生への教育活動にも力を注いでいる。

  • NICUで支えるのは、赤ちゃんだけじゃない。家族の不安と希望に寄り添う時間

    独立行政法人国立病院機構福島病院から医大附属病院へ。いずれも周産期医療の最前線であるNICUで働いてきた根本さんは、常に急変と隣り合わせの環境で、冷静な判断と繊細なケアを求められています。「新生児は、自分の症状を伝えることができません。だからこそ、ほんの小さな変化にいかに早く気づけるかが問われる」と語るように、観察力と専門知識が常に必要とされる現場です。

    一方で、新生児のみでなく家族への関わりも大切だと言います。「小さく生まれて、すぐにNICUに入ると、母子の触れ合いが制限される。親御さんの“可愛いけど、怖くて触れられない”という葛藤は非常に大きいんです」。だからこそ、面会時には赤ちゃんと家族だけの時間をつくったり、赤ちゃんの写真を撮って日々の変化や成長を共有したり。医療行為の間に、心のケアを担う工夫がちりばめられています。

  • “失うこと”もある現場で、それでも命を支え続けるということ

    もちろん、すべてが順調に進むわけではありません。中には回復が見込めず、命を看取るケースもあります。「どれだけ努力しても助けられない場面がある。それがこの仕事のいちばん苦しいところです」。根本さんはそのたびに、自分に何ができたか、何を届けられたかを自問するといいます。

    「自分の中にその子たちがいる限り、『次こそは助けてあげたい・家族のもとに返してあげたい』」と話す根本さん。悲しみの中にあるご家族にとって、そばに寄り添う存在であること。そこに、看護師としての覚悟と、人としての温かさがにじみ出ていました。

  • 次世代へつなぐ責任。教えることで、自らも学び続けていく

    根本さんは現在、新人教育や大学での講義にも携わっています。「自分が若い頃、先輩に何度も助けられてきたからこそ、今はそれを返していく時期だと思っています」。特に印象的だったのは、新人看護師がNICUで初めて「自分が関わったことで、良い反応を示してくれた」と感動した瞬間に立ち会えたこと。「その喜びを共有できたとき、“伝わった”と感じられて嬉しかった」と振り返ります。

    人材の偏在、地域間の医療格差、搬送体制の限界など、福島県が抱える新生児医療の課題は少なくありません。だからこそ、看護師同士の学び合いや支え合いの輪を広げていくことに力を注いでいます。

  • 男性看護師として、赤ちゃんと家族の“これから”を支える看護を

    2児の父でもある根本さん。看護師として、父として、家族と向き合う視点はごく自然に重なります。「赤ちゃんにとって最初のケアが、その後の人生に影響することもある。だからこそ、『今』だけではなく将来の成長や発達までを考えた関わりが大事。そのために、赤ちゃんとご家族を共に支えるようにしています。そして、お母さんだけでなく、同性として同じ父として、お父さんへの関り方を特に意識しています。」家族のかたちや父親の育児休暇などの背景が多様化する今、男性看護師の存在は、現場にとっても、社会にとっても大きな意味を持っています。

    「新生児医療に携わる看護師は、“命のはじまり”に立ち会うことができる数少ない職業です。そして、その命がどのように生きていくかを支える、壮大で、あたたかい仕事なんです」。そう語る根本さんのまなざしには、静かで確かな決意が宿っていました。

    インタビュー動画はこちら