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INTERVIEW

看護師インタビュー

一人ひとりに寄り添い、「ここで産んでよかった」と思えるお産をめざして

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岡崎バースクリニック 助産師

渡辺 温さん

Nodoka Watanabe

Profile

高校を卒業後、県内の看護師養成学校へ進学、さらに助産師養成学校に進み、助産師の国家資格を取得。
その後、県内の総合病院で3年間勤務し、現在に至る。

  • 郡山市にある岡崎バースクリニックで、妊産婦や赤ちゃん、そしてその家族に寄り添いながら日々のケアを行っている助産師、渡辺温さん。
    助産師を目指したきっかけは、自身の母親が経験した産後うつの話を、高校生の頃に聞いたことでした。「あのとき、もっと周囲の支援があったら違っていたかもしれない」。そんな想いから、産後のお母さんにもっと近くで寄り添える存在として、助産師の道を志しました。

  • 助産師への夢。原点は母への想い

    護職としての第一歩は、ご自身のご家族に関わる出来事がありました。

    「私が赤ちゃんだった頃、母が産後うつ病になり、しばらくの間、私は親戚の家で育てられていたそうです。それを知ったのは、自分が高校生になってからのことでした。その話を聞いた時、『母はもっと周囲から支援を受けられなかったのかな』と考えるようになったんです」

    自分を育ててくれた母への感謝と、支援が届かなかったことへのもどかしさ。その両方の想いが、「母のような思いをする人を減らしたい」という強い気持ちにつながっていきました。そして産後のお母さんに最も近い存在は誰かと考えたとき、「助産師」という仕事が自然と浮かびました。

  • 緊急搬送で出会った誕生の瞬間

    印象に残っている出産のエピソードについて尋ねると、渡辺さんは新人の頃に経験した出来事を挙げてくれました。

    ある日、妊婦さんから「陣痛が来たため病院へ向かう」と連絡を受けた直後に「もう無理です」と救急搬送されてきました。現場に到着したときには、すでに赤ちゃんの頭が見えている状態だったといいます。

    「その方は、呼吸法がとても上手だったんです。初産婦さんなのに、到着してすぐ出産となり、とても驚きました」

    この出来事をきっかけに、初産か経産かに関係なく、さまざまなケースを想定して準備を整えておく大切さを学んだといいます。「“予想外”を想定することも助産師の大事な仕事」──命と向き合う現場での学びは、今の仕事観にも大きく影響を与えています。

  • 一人ひとりに寄り添う“声かけ”の力

    現在、渡辺さんは岡崎バースクリニックで、多岐にわたる業務に携わっています。2階の基本分娩フロアでは、分娩の受け入れや介助、帝王切開後の術後管理を担当し、3階の産後ケアや妊婦管理を行うフロアでは産後のお母さんたちへの授乳・沐浴指導や退院指導、また妊婦さんのつわりや切迫早産、羊水過少などの管理も行っています。その日の状況によってフロアを移動しながら、柔軟に対応しているそうです。

    「コロナ禍ではバースプランが思うように叶えられないことも多く、もどかしさを感じる場面がありました。ここでは、全てが自由というわけではありませんが、柔らかく優しい雰囲気があり、お母さんたちの希望に寄り添いやすくなったと感じています」

     

    渡辺さんが日々大切にしているのは、“その人らしさ”を尊重した関わりです。お母さんたちの声や表情の変化を細やかに読み取りながら、安心感と自己肯定感を育む支援を行うことが、渡辺さんの信念だと感じられました。

  • 小さな声を受けとめて、やさしく背中を押せる存在をめざして

    渡辺さんは、「患者さん一人ひとりの状況は本当にさまざまで、同じようなケースは一つとしてない」と感じているそうです。若年層や高齢の方、支援者がいない方、強い思いや希望を持つ方、社会的リスクを抱える方など、それぞれ異なる背景がある中で、その人に合った具体的な対応をしていくことが、自信を持って子育てを楽しめることにつながると話します。「今できていることを認めたり、声をかけたりすることで、お母さんたちが少しでも自己肯定感をもてるように、背中を押してあげたいと思っています」と語り、相手の気持ちに寄り添う姿勢を大切にしているそうです。

    また、「その人の立場に立って考えることや、温かい心で接することを何より大切にしたい」とも話します。相手の視点に立った柔軟な関わりを心がけながら、より良い支援につなげていけるよう、日々知識や技術を高めていく努力を続けているとのことです。「助産師として、これからも一緒に頑張っていけたらうれしいです」と、同じ道を志す人たちへのエールも忘れません。

    インタビュー動画はこちら